(일본어TCT시험)ダルフール―訴追の圧力で悲劇止めよ (08.07.18)
ダルフール―訴追の圧力で悲劇止めよ
いま世界が直面する最悪の人道危機と言われるスーダンのダルフール紛争で、国際刑事裁判所(ICC)が同国のバシル大統領の訴追に向けて動き始めた。
容疑は組織的なジェノサイド(集団殺害)と戦争犯罪、人道に対する罪だ。ICCの主任検察官が大統領の逮捕状を請求し、3人の予審判事が証拠を調べている。結論が出るまでには数カ月かかると見られる。
現職の国家元首が訴追されれば、03年から活動を始めたICCとして初めてのことになる。約100カ国が加盟する常設の裁判所が法の支配の原則を貫こうとしている意義は大きい。
スーダン西部のダルフール地方では03年、黒人を中心とした反政府組織が発足したのを機に、対抗するアラブ系民兵組織や政府軍が村落を襲撃しはじめ、国連の推計で約30万人が犠牲になり、250万人が難民になった。
ICCの検察官は、バシル大統領が政府軍や民兵組織に犯罪行為を命じたと見た。大統領は容疑を認めず、「ICCに加盟していないスーダンには権限が及ばない」と反発している。
組織的な虐殺や強姦(ごうかん)が続く現実に、手をこまぬいているわけにはいかない。政府軍が民兵組織と連携して組織的に攻撃していることは、国連人権理事会も確認している。大統領の関与がどの程度あったのかが焦点だろう。
心配なのは、スーダン政府の反発で、現地に派遣されている国連平和維持活動(PKO)や人道支援が妨害されることだ。スーダンの与党は「大統領訴追となれば、ダルフールでさらに暴力と流血が増す」と警告している。
それでなくても、ダルフールのPKOは暗礁に乗り上げている。
国連とアフリカ連合(AU)の合同平和維持部隊(UNAMID)が1月から展開している。ただ、現時点では兵力は予定の半分以下の1万人弱しかいない。PKO要員への襲撃事件が相次ぎ、8日に7人が、16日にも1人が殺害された。
現地では国連職員の一部が退避を始めている。AU議長のキクウェテ・タンザニア大統領は「政治的混乱の危険がある」として訴追の延期を求めた。
スーダン側は、国連要員の安全を確保する義務がある。PKOや人道援助が後退する事態は避けねばならない。
国連安保理は、PKO要員への襲撃を非難する議長声明を出した。そもそも紛争の責任者を裁くようICCに求めたのは安保理だ。国際正義の追求と同時に、現地の混乱を増さないよう手をうつべきだ。原油取引でスーダン政府と良好な関係をもつ中国には、常任理事国として役割を果たしてほしい。
日本を含めて国際社会は、訴追への動きをテコにスーダン政府への働きかけを強めるべきだ。