(일어TCT)絶滅危惧種ライチョウ、乗鞍岳で増加 03年から4割増(08.07.18
乗鞍岳で増加傾向にあるライチョウ(左は雄)=5月、岐阜・長野県境、竹谷写す |
全国的に減り続け、絶滅の危険がある国の特別天然記念物ライチョウが、岐阜・長野県境の乗鞍岳(3026メートル)では5年間に4割増えていることが信州大学の中村浩志教授(鳥類生態学)の調査でわかった。乗鞍スカイラインのマイカー規制や登山者の立ち入り制限の効果が表れたとみられる。
中村教授の研究室によるライチョウのなわばり数の調査によると、北アルプス・乗鞍岳の08年の個体数は170羽。03年には120羽だったので、4割以上増えた。ライチョウに標識を取り付けて個体を識別する調査でも、乗鞍岳では増加傾向を示しているという。
乗鞍スカイラインの開通から2年後の1975年の調査では、乗鞍岳の生息数は120羽と推定されており、そのころと比べても現在の個体数は増えている。
一方、全国的にはライチョウは減り続けている。
中村教授と、恩師の故羽田健三教授の研究室によって、84年以前に20年以上かけて実施したなわばり数の調査によると、当時の全国のライチョウの生息数は約3千羽と推定されていた。00年から、ライチョウが生息する主な山を選び、当時と同じ時期に同じ方法で調査したところ、現在の生息数は約1650羽と推定され、20年間で40%ほど減少していることが分かった。
特に減少が目立つのは南アルプス。北岳(3193メートル)周辺で昨年10月に行った調査では、山頂付近で1羽も確認できなかったという。
観光道路や登山道の整備が進んで登山客が増えたことや、ふもとが開発されニホンザルやニホンジカが高山帯に侵入するようになりライチョウのえさになる高山の植物を食い荒らすようになったことなどが原因とみられている。
なぜ乗鞍岳だけで増えているのか。
中村教授は「最近のマイカー規制と、それ以前から実施されている登山道以外の立ち入り禁止などによって植生が回復してきている結果だろう」と分析する。
岐阜県は、乗鞍岳の自然環境を守るため、03年に乗鞍スカイラインのマイカー乗り入れ規制を始めた。この結果、年間利用者数は、規制前の推定約42万人から20万人程度まで減った。07年は19万6千人だった。
また、乗鞍岳では、これまでニホンジカやニホンザルの高山帯への侵入がなかったこともライチョウが増えた要因になっていると、中村教授はみている。しかし、最近は乗鞍岳でも、ふもとへのニホンジカやニホンザルの侵入が始まっているという。
中村教授は「全国で減少を続けるライチョウを守るためにも、行政が中心となって、高山には本来生息していなかったニホンジカやニホンザルなどの駆除など、積極的な保護に取り組むべきだ」と話している。(久土地亮、竹谷俊之)