(일어TCT학원)厚生年金記録―何を信じたらいいのか (08.06.28)
厚生年金記録―何を信じたらいいのか
あきれてものも言えない。年金記録問題で、社会保険庁のずさんな仕事ぶりが、またも明らかになった。
こんどはサラリーマンが加入する厚生年金である。社会保険庁のコンピューター内のデータと、そのもとになる紙台帳を突き合わせたら、過去の給料に相当する「標準報酬月額」や加入期間など、データの食い違いが全体の1.4%に見つかったのだ。
あくまでサンプル調査だが、約4億件の厚生年金の記録全体に換算すると、560万件もの記録にミスがあるかも知れないことになる。
問題となってきた「宙に浮いた年金記録」5千万件とは、別の問題が生じてくる。年金記録に欠落がなくても、標準報酬月額が間違って低く記録されていれば、年金額が本来より低くなってしまう。記録の有無だけでなく、記録の内容も怪しくなってきた。
これでは一体、何を信じたらいいのかと言いたくなる。
多くは、現在70歳以上の人の古い記録で、紙台帳の情報をコンピューターへ移した際の入力ミスとみられる。だが、事後にデータが訂正されたが紙台帳には訂正の記載がなく、コンピューターの方が正しいケースもあるというから、修正は容易ではない。
政府はいま、現役世代へも「ねんきん特別便」を送っている。自分の年金記録を確認してもらい、間違いがあれば申し出てもらうためだ。しかし、特別便には「標準報酬月額」は記載されていないので、今回のような間違いを見つけることはできない。
ではどうするのか。年金記録を自宅のパソコンから確認できる仕組みを拡充し、社会保険事務所ですべての紙台帳を検索できるシステムを来年度までに整える。そのうえで10、11年度の2年間に集中的に問い合わせを受ける。これが政府が打ち出した対策だ。
厚生労働省の試算では、すべての紙台帳とコンピューターの記録を照合するのには、10年がかりで最大3300億円が必要になるという。すべてをチェックすると巨額のお金がかかるので、申し出のあった人にしぼって調べる、ということなのだろう。
しかし、今回のようなミスは本人にもなかなか分からない。申し出を待っていては、間違いが埋もれてしまう。紙台帳との照合はいずれ避けられなくなる。
厚労省は、現役世代は年金を受給し始める時に確認を徹底し、年金受給者については問い合わせ状況をみながら順次、照合を進めるとしているが、すでに年金を受けている人にとっては切実な問題だ。もっと対策を前倒しすることも考えてはどうか。
それにしても、次々に発覚する不始末への怒りを、国民はどこへぶつければいいのだろうか。